ストループ効果

認知的な葛藤、ストループ効果とは?

心理スキルを日常生活に使うべく日々研鑽を重ねる博士と助手の元に、今日も一通のお便りが届いたようだ……

 

 

博士

連想ゲームをやってみようか

助手

なにかの実験ですね!(わくわく)

博士

わしが単語を言うから、そこから連想する動物を答えてくれい。では、色つきでいくぞ!

助手

はい、よろしくお願いいたします

博士

バナナ

助手

えーと、猿

博士

リンゴ

助手

う〜ん、ウサギ

博士

ササ

助手

パンダ!

博士

どうじゃ?

助手

最初のふたつは答えにくかったです

博士

それはなぜじゃ?

助手

色がおかしくて果物を想像するのに時間がかかりました

博士

まさにそれじゃ。それがストループ効果なのじゃ。今回のお便りの方も、ストループ効果に随分と苦しんだようじゃの

認知的な葛藤とは、この二人のことです!

営業マン(39才 / 男性 / 会社員)

ホームページ制作会社で営業をやっています。

私の場合、新規のお客さまは異業種交流会で見つけることが多いので、多い月は三日に一度は交流会にでて、300名以上の方と名刺交換をします。

それだけの方と会うと覚えてられないと感じられるかもしれませんが、私の特技は、はじめて会った方のお名前や職業、肩書きをすぐに覚えること。それで信頼されて、お仕事をいただけることも少なくありません。

ところが先日、お二人の方のお名前を何度も取り違えて呼びかけてしまい、お二人とも怒らせてしまいました。そのお二人とは…

××商事の丸井さんと

○○株式会社の角田さん

お二人のお名前はしっかりと記憶したのですが、面と向かうと取り違えてしまうのです。まさかこんな二人に同時にお目にかかるような恐ろしい偶然は、今後、そんなにないとは思うのですが、もしものこともありますので、同じ間違いをしないようにするために、どうしたらいいか教えてください。

 

博士

いや、これで角田さんは、ズルイじゃろ

助手

確かにこれは混乱しますね

博士

完全なるストループ効果じゃな

助手

対策はあるんでしょうか?

博士

ストループ効果が働くと脳が混乱するということを知っておくことじゃ。順番に説明していこう

さぁ、あなたもストループ効果を体感してください!

ストループ効果とは、意味の異なる刺激が同時に呈示されると、刺激に反応するまでに時間が多くかかる現象のこと。

1935年に心理学者ジョン・ストループによって報告されたことから、この名前がつきました。どんな実験だったのか、早速、実験内容をご紹介していきましょう。

例えば、色名を答える質問を行った場合、赤インクで書かれた「あか」の色名を答える場合より、青インクで書かれた「あか」の色名(『あお』)を答える方が時間がかかる事をいう。

また、文字の意味を答える質問を行った場合、赤インクで書かれた「あか」の意味を答える場合より、青インクで書かれた「あか」の意味(『あか』)を答える場合の方が時間がかかる事を逆ストループ現象と呼ぶ。

ウィキペディア「ストループ効果」より

博士

どうじゃ?

助手

文字だけだと、正直よくわかりません

博士

では、実際にこの実験を体感してみるといい

 

第一問

4つの漢字が4つの色で書かれています。
それぞれの漢字の色を左から順に声に出して答えてください。

簡単ですね。では、

第二問

次はこちらで同じことをしていただきます。
それぞれの漢字の色を左から順に声に出して答えてください。

いかがでしたか?

これは、ストループ効果を体感していただくのに一番わかりやすい実験。

実際に試していただいた方には、第二問のほうが、答えにくかったり、答えるまでに時間がかかることを体感してもらえたと思います。

理由は、文字意味が色情報の認知を邪魔(干渉)して、認知的な葛藤が生まれたから。

文字の意味と文字の色という2つの刺激が同時に入ってきて、それがお互いに干渉しあうので、脳の感覚的な処理に時間がかかるのです。

答えにくかったのは、いっぺんにふたつの情報が入ってきてため「色と文字どっちだったっけ?」という迷いが生じてそれがストレスになったということ。

答えるまでに時間がかかったのは、色を認知するために文字から入る情報を排除して、色に注意向けなくてはならなかったからです。

逆ストループ効果も体感してください!

続いて、逆ストループ効果も体感していただきましょう。

第三問

それぞれ文字が表す色を、下のカラーパッチから選びアルファベットで答えてください。

では、逆ストループ効果を体感していただくための

第四問

こちらで同じことをしていただきます。
それぞれ文字が表す色を、下のカラーパッチから選びアルファベットで答えてください。

第二問は文字意味が文字色を干渉しましたが、今度は文字色が文字意味の認知を干渉しているので、逆ストループ効果と呼ばれています。

ストループ効果も逆ストループ効果も、単語を読む速度と色の名前を答える速度自体が異なることもあり、また色と文字と両方の読み取りを同時に行うため処理に時間がかかるとされています。

以上がもっとも有名なストループ効果の実験ですが、他にもストループ効果は認知,発達,人格,臨床など多くの心理学の分野で、いろいろな方法で実験されています。そのいくつかご紹介しておきます。

  • 数字がいくつか書かれているものを提示し,数字の個数を答える(たとえば「4」という数字が7つ書かれていれば7と答える)
  • 基点に対して文字が上下左右どこに書かれているかを答える(たとえば基点の下に「上」と書かれていれば下と答える)
  • 犬の線画の中に「猫」と書かれていると犬と答える
  • 高い音(175Hz)で「low」あるいは低い音(110Hz)で「high」といい、その音の高さを答える
  • 蛇恐怖症の人とそうでない人に「毒蛇」「這う」など言葉を書いたものを示し、その文字の色を答えてもらう(蛇恐怖症の人はそうでない人より反応が遅れる=情動的ストループ効果)

 

助手

博士、私、思いついてしまったんですが…

博士

なんじゃ?

助手

お笑い芸人で、笑いながら怒る方がいらっしゃいましたが…

博士

いまはいい俳優さんになったあの人じゃな

助手

あの笑いながら怒るっていうのは、ストループ効果ではないでしょうか?

博士

素晴らしいの、助手君。うむ、笑っているという視覚からの情報と、怒っているという聴覚からの情報が干渉している、立派なストループ効果じゃ

助手

ありがとうございます。やはりそうでしたか。心理学を笑いに取り入れるとはスゴイですね。しかも、なかなかできない芸ですし

博士

ふざけんなよ、この野郎! どうじゃ?

助手

いや、なんというか…できてません

博士

ふざけんなよ、この野郎!

助手

(頑張ってやろうとしてるのか、普通に怒られてるのか、もはやわからないよ…)

 

ストループ効果のまとめ
  • 同時に目にする二つの情報が干渉しあってしまうと、ストレスとなり判断がしづらくなる。この認知的な葛藤を「ストループ効果」という。
  • 文字意味が文字色を干渉するのをストループ効果とした場合、文字色が文字意味の認知を干渉するのを逆ストループ効果と呼ぶ。
  • ストループ効果は認知,発達,人格,臨床など多くの心理学の分野で、いろいろな方法で実験されている。

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