ビジネス心理学

おとり効果の恐るべき破壊力について

有り難いことに、今年に入って商工会議所さんからのお声掛けなどが増え、全国のあちこちに出かけている。

色々な土地を訪れるたび、その土地で有名なカレーショップに足を運び「むぅ、この土地のカレーはこういう系統か」などとひとりごちるのは最大級の楽しみであったりするが、問題はホテル。正確には、ホテルの予約だ。

というのも、ひたすら面倒だからである。知らない土地の知らないホテルをどうやって判断したらいいか分からないからだ。

確かにサイトには写真が出ていたり、口コミが載っていたりするけど、それらは大同小異の範疇。その中で考えたり決めたりするのが、ひたすら面倒くさいのだ。

こういうとき人はどうやって決めるか知ってる?

 

答え。

安い方にする。

 

たとえばある土地に、立地や部屋の大きさや建物の古さやサービスがほとんど同じビジネスホテルがあるとして、宿泊希望日で検査したら以下の価格が表示されたとしよう。

○○INN  6,000円(朝食なし)
××INN   7,000円(大浴場付き・パンとコーヒーの朝食サービス)

あなたなら、どうする?

僕の場合で言うと、大浴場にはものすごく心惹かれるものの、朝飯は食べない派なので「じゃあ、安い方で」となる。

ところが、だ。

○○INN  6,000円(大浴場なし・朝食なし)
××INN   7,000円(大浴場付き・朝食なし)
△△INN  7,000円(大浴場付き・パンとコーヒーの朝食サービス)

と三択が出てきたら?

僕は速攻で「△△INN 7,000円(大浴場付き・パンとコーヒーの朝食サービス)」を選ぶ。

1,000円プラスで大浴場と朝食ついたら得じゃん

とか思いつつだ。二択の場合と条件はまったく変わっていないのにである。朝飯は食べない派なのにである。

冷静に考えるまでなくおかしな話であるが、これこそが「おとり効果」の真髄なのだ。

MITの院生すら躍らされる「おとり」とは?

「おとり効果」の実験として、マサチューセッツ工科大学(MIT)スローン経営大学院の院生100名に対し、次のようなアンケートが行われた。

 

「エコノミスト」というイギリスやアメリカの知識層に愛読される政治経済誌を購読するとして、次のうちのどれを選ぶ?

web版の購読 59 US$
印刷版およびweb版のセット購読 125 US$

 

アンケートの結果は…

web版の購読 68人
印刷版およびweb版のセット購読 32人

まぁ普通に納得のいく数字である。

次に選択肢をひとつ追加して、同じ質問をした。

 

「エコノミスト」というイギリスやアメリカの知識層に愛読される政治経済誌を購読するとして、次のうちのどれを選ぶ?

web版の購読 59 US$
印刷版の購読 125 US$
印刷版およびweb版のセット購読 125 US$

 

すると結果はこんな具合に変わった。

web版の購読 16人
印刷版の購読 0人
印刷版およびweb版のセット購読 84人

「印刷版の購読」という「おとり」が入ることによって、「印刷版およびweb版のセット購読」が倍以上になったのだ。

合計金額を計算してみようか。

二択の場合が8,012US$
三択の場合が 11,444US$

選択肢をひとつ加えただけで、3,400US$以上の差が出たということだ。これがリアルに起こって、しかも年間ベースだとしたら? たったひとつの選択肢がとてつもない売上の差を生むことを理解してもらえるだろう。

 

ずっとこのブログを読んでくれてる人なら「あれ? ってことは、以下で書いてた松竹梅プライスの松もおとり効果?」と感じたかもしれない。

メンタリズムは本当に心が読めるのか?

 

いや、素晴らしい!
その通りである!!!

ここで書いた例で言えば、1200円の松メニューが850円の定食を売るための「おとり」なっている。

今回のご紹介した「おとり」作戦でいくなら、以下の感じだろう。

日替わり定食:600円
日替わり定食(飲み物付き):850円
週代わり定食(山盛りサラダ・飲み物付き):850円

どちらをしてもいい。この場合「日替わり定食」が「おとり」である。

おとり効果の使用する際に注意すること

じゃあ一体、僕の、そしてMITの院生の心の中でなにが起こって、こういう結果になったのか?

簡単だよね。「比べてしまった」のである。

僕は「大浴場付き・朝食なし」と「大浴場付き・パンとコーヒーの朝食サービス」を無意識のうちに比べてしまい、MITの院生は「印刷版の購読」と「印刷版およびweb版のセット購読」を無意識のうちに比べてしまった。

僕ら人間は、身の回りのものを常に他のものとの関係で捉えて生きている。というか、そうせざるを得ないようにできている、言うなれば「無意識のうちに比べてしまう」生き物なのだ。

だから無意識のうちに比べさせる「おとり効果」は破壊力があるのだし、ビジネスでもプライベートでも多いに活用されている。

あなたもあなたの欲しい結果のために「おとり効果」を使わない手はない。ぜひ多方面で活用して欲しいのであるが、使う際には一点だけ注意が必要

人は比べやすいものは無意識的に比べてしまうが、比べにくいものは無視する傾向があるから注意してね、という点である。

いや、具体例の方が分かりやすいかな。

○○INN  6,000円(大浴場なし・朝食なし)
××INN   7,000円(大浴場付き・朝食なし)
△△INN  7,000円(大浴場付き・パンとコーヒーの朝食サービス)

これだと比べやすいが

○○INN  6,000円(13平米・大浴場なし・朝食なし)
××INN   7,000円(18平米・大浴場付き・朝食なし)
△△INN  7,000円(15平米・パンとコーヒーの朝食サービス)

こうなると比べる基準がなくなるので(あるいは複雑になるので)比べるのが面倒になり「安いのでいいか」となってしまう。

つまり「おとり」を上手くビジネスに使おうと思うなら「比べやすくしておく」ことが大切ってことだ。

*「おとり効果」は、恋愛ンシーン、特に合コンなどでもよく見かけるが、どう使われているか、さてあなたは分かってる?

 

illustration たかみまさひろ

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